南インドカレーのうまさに気づいた日

すっかり3月だ。なんてこった。
2月の後半、ぼーっとしていたらすぐに時間がすぎていってしまった。気温も日に日に高くなり、春うらら。そんなところですかね。

===

西荻窪にある、南インドカレー屋にはじめて行った。ほんとうに、びっくりするぐらい美味しかった。
流行っているのだろう、自分と同行者がギリギリ滑り込めたみたいで、何組かあとのお客さんが来る頃には品切れとなっていたようだった。
正直、その日は北インドカレー(ネパール人がやっている、ナンが出てくるようなよくあるインドカレー屋)の気分だったので、同行者が南インドカレーを食べたいと言った時はすこし落胆した。
しかし、八重洲のエリックサウスしかり、母数が少ないからか日本人が営んでいる南インドカレー屋は個性豊かだ。モダンな雰囲気ただようカレーも嫌いではない。
なので特に意見せずついていくことにした。

南インドカレーのミールス(大皿のうえに、小さいいくつかの皿が乗っていて、何種類かのカレーとサンバル、ラッサム(インドの味噌汁?)とバスマティライスというタイ米のようなものが乗っているプレート)でいうと、エリックサウスで体験したことはあったのだが、どうにも私はバスマティライスが苦手だった。
その米だけだと、パサパサしていて単独で食べるのには向いていない。
「なんかあの乾燥してる感じが苦手なんだよ」そう同行者に話すと、
ミールスは一応、食べ方があるんだよ」と教えてくれた。

カレーとは、通常、ルーをご飯の上にかけるだけだと思っていた。だがミールスについてはやや違うようで、かけるというよりは米とルーを”混ぜながら”食べるものらしい。しかも、ルー意外にもラッサム・サンバルといった付け合わせなど何種類かのスープ上ものがプレートの上にはあることが多いが、それぞれ味を楽しんだあとはその全てをかけて、混ぜこぜにするのが基本の食べ方らしい。

ありえね〜。

最初はそう思った。しかし、郷に入っては郷に従え、とこの言葉を作った歴史が物語っている(?)。チャレンジしてみる他ないだろう。


カレー屋はウッド調の暖かでモダンな空気をまとっていてスパイスのいい香りがぷわんと漂っていた。同行者はビリヤニセット、私は2種類のカレーのミールスセットにした。ビリヤニは人気そうで、同行者の分でなくなってしまったようだった。(後のお客さん、すみません)
プレートが届いて、早速食べる。まずはラッサムというインドの味噌汁と呼ばれている物を飲んでみた。
美味しい! ほのかにパクチー? セロリ? の味がする(レジに「パクチー抜きできます」と書いてあったから危機感は感じていたんだ)、私はパクチーが苦手だ。それなのに、そのパクチーっぽい癖がある清涼感が不思議と嫌にならない。
すごい…….思わず感嘆の声が出た。

カレーもサンバルもとても美味しいし、教えてもらったやり方に沿って食べてみたらバスマティライスの乾燥もあんまり気にならない。ルーとお米を合わせることでほどよいしっとり感を産み出し、パサつきもなくべったりとした感触もない。「こういうことだったのか、あの米は」と思った。
それと同時に、エリックサウスで邪険にしかけたあのバスマティライスに謝罪をしたくなった。

目で見る量に比べて、思った以上のボリュームがある。満足したうえにスパイスのおかげか体がぽかぽかと温まって心地いい。
「体調がよくなってきた……」
私が食べた量以上をぺろりと食した同行者は、珍しくにこにこと笑っていた。

===

店内で、小さな冊子を見つけた。テイクフリーとのことなので二つほどいただく。
その冊子はどうやらスパイスのサブスクリプションについてくる付録だったのだが、そのうちの一つが面白かった。
AIR SPICEという会社の代表と、カレーにまつわる様々な人々との対談を収めた付録だ。植物園を営んでいる対談者の言葉が、とても興味深かった。

「材木の話で言ったら、宮大工さんはそのことを”第二の人生”っていうんですよ。150年生きた気はまだ若いから、300年くらい生きた木が神社や仏閣なんかに使われたりする。300年育った木は、その後、柱になってから第二の人生で最低300年は持つと言われています。木自体は300年たったら流石にピーク(=植物としていい状態のタイミング)を越えているはずなんですけれど、柱としては別のタイミングがピークになるかもしれない」

 一部引用:PERFECT SPICE 1